◆児童養護施設のボランティアってどんな感じ?
今日は、Masterpiece企画「児童養護施設のボランティアに聞いてみよう!」の会です。
児童養護施設ボランティア歴が20年のゲストさんをお招きして、そのご経験から色んなことを学んで、皆さんで語り合っていきます!
ゲストの方以外にも、児童養護施設の職員、他の児童養護施設ボランティア経験がある方々や、実際児童養護施設でボランティアを受けていた当事者の方もいらっしゃいます!
色んな語り合いができそうですね!
◆児童養護施設ボランティア経験について教えてください。
都内の某施設で20年間ボランティアをしておりますSと申します。
学習ボランティアを軸として、子どもたちとのイベントなど色んなことをしています。
25歳の大学院生の時に、都内の大舎制の施設でボランティアを始めました。
きっかけはそんな深いものは無く、小学生の頃からボランティア活動には興味があったし、「海外ではボランティアする文化は当たり前だから」という気持ちで始めました。
自分は勉強教えるのは得意だったので、「学習」、「ボランティア」と検索して一番上に出てきた児童養護施設を選びました(笑)。
当時は、長く続けるなどそんな見通しを立てて始めた訳ではなくてありません(笑)。
ただ、始めてみると子どもたちはかわいくて、「またね」と子どもたちと挨拶を交わし、また会いに行くということが習慣になっていきました。
当時は、ボランティア活動に関する制約とかそういった説明が施設側から細かくあった訳では無く、長年続けていくなかで試行錯誤して自分たちで作っていった感じです。
◆具体的にどんなボランティアをしていましたか?
最初は月に一回遠足に連れていくのが恒例イベントでした。
土手でお弁当を食べたりもしました。そういうイベントを通して子どもたちの良いところをたくさん見ることができました。
外出の時は基本的に子ども一人に対して大人一人。1対1でマッチングしていました。
そうすることによって、子どもが精神的にイライラしないからトラブルも起きません。
それにそういった手厚いサポートだと職員さんも安心して預けてくれます。
◆他の団体とのコラボ
色んなニーズが見えてくる中で、他の団体さんとコラボするようになりました。
ゴミ拾いをしている団体さんと一緒にゴミ拾いに参加したり。子どもたち結構楽しんでやるんですよね。すごいところから色んなもの拾ってきたり(笑)。
個別の子供のケアは私たちでするので、他の団体さんはそこまで個別のケアする必要はないようにという構造を作っていました。
ボランティアたちだけの引率もありました。そうすることによって職員さんたちが普段できない作業をできる助けになります。もちろん職員さんの引率があるときもありますが、基本的にボランティアの方で企画を進めていきます。
◆職員さんとの信頼関係
職員さんたちと仲良くなることはとても大事なことです。
マメに連絡を取ることはもちろん、イベントの時の個別の様子の記録を取っているととても感謝されました。
どうしても多くの児童養護施設は施設側でボランティアさんをコントロールするようになっています。多くの施設ではそうだと聞いて驚きました。
もちろん私たちも最初からボランティア主体というわけではありませんでした。最初の10年は受け身でしたが、その後の10年をかけて今の体制を作り上げてきた感じですね。
先生たちとの飲み会は大事でしたね(笑)
◆学習ボランティア
勉強はそれぞれのレベルに合わせてやっていました。
中退が課題だったら中退しにくいように対策をするとか。
職場が塾だったので、その職場仲間にも来てもらったりすることも。
これまでのネグレクトなどの家庭背景をもつ子は、学習の習慣ができていなかったりするので、知的好奇心をくすぐるようなことをしてみたり。
卒園後も勉強についての相談に乗ったりしてます。
◆卒園生支援 ~アフターケア~
最初は自然と、個人レベルでやっていましたね。
施設との情報共有は必要に応じてしていました。
卒園後、困りごとに合わせて卒園生を他の団体に連れて行ったりもしました。
「こういうのがあるから行っておいで」ではなかなか行かないので一緒に行って繋いでいます。
そうやってだんだん図々しく色んな団体に顔を出すようになりました(笑)。
子どもの成長の時間軸の縦軸。
そしてその年代に合った支援の横の軸。
その支援の網を紡いでいくことによって、そこから漏れる子どもがいないようにしていきたいという思いでした。
子どもたちが誰を頼るのかは自分で決めていきます。
中高生年代からは特にです。相性はどうしてもありますよね。
それも含めて、どんな人が自分にとって頼りやすいか自分で決めていく。
学習ボランティアという位置付けになると勉強しなきゃとなりますが、他の団体さんでは「パーソナルサポーター」という個別支援のためのボランティアという形もあるみたいです。
自分のことを見てくれるというボランティアさんがいることは大切なことかなと。
私たちボランティアも、子どもたちが施設を出た後のことを考えていかなくてはならないですよね。
中高生くらいからアフターケアへ繋いでいく。子どもの選択も大事にする。
施設卒園後、卒園生が「これは施設に報告しないといけないよなぁ」ということを抱えている時、行きにくければボランティアさんが施設に同行することも。その後、ご飯行ったり。
特に、施設を出たばかりの子たちは、管理されていた中からやっと解放されたという中にあるので、施設へ相談するということを「しにくい・したくない」ということがある傾向です。
そこでボランティアさんが、職場さんにそれとなく言っておいて、こんなふうに言っていたから大丈夫だよ一緒に行ってみようと安心感を与えたり仲介することもあります。
卒園後は、ひとりの大人として関わっていく。
そんな関係性が大事だと思います。
◆難しい問題とは?
やはりお金の問題が関わってくることが難しいですよね。
あとは性的被害、夜の仕事の関係など。
そういうことは施設と繋げて連携していきます。
大家さんに頭下げに行ったこともありますよ(笑)。
「どうか家賃を待ってください」とその子と頼み込みにいく。
何で自分が頭を下げてるんだろう(笑)という感じですけど、大家さんにとって「あぁ、このような大人がこの子の後ろ楯になっているのだな」ということで安心になります。
◆「もちつ、もたれつ」の関係性
施設とボランティアさんもそうですが、
卒園した先輩から後輩の子どもたちへ。
子どもたち同士でのネットワークで支え合っていくことも大事なことです。
ボランティア、施設、子どもが
グーチョキパーのような関係になるように。
◆どのようにしくみ化していったのですか?
ボランティア登録説明会するようになりました。それもボランティアたちで企画しました。活動の紹介、施設ボランティアするにあたって気を付けておくことなどを学びます。
もちろん職員さんにレクチャーしてもらうことも。距離が近い子に対しての距離感レクチャー、断り方、場面の切り替え方など。やはり職員さんはプロだなと思います。
あとは、昔よりもボランティア組織を小規模化していきましたね。多すぎて把握しきれない時期がありましたから。組織として回るように小規模化していきました。
あと、2年に一回体制を更新します。リーダーの交代です。
名簿の管理はリーダーがします。
ボランティア登録は現在50人ほどいて、運営5人。
メールの管理や団体との連絡が主です。ベテランメンバー勢だから任せることもあります。
一時期、仲介役の職員さんが異動になって新しい職員さんになったときに、不信がられたときがありました。目をつけられて注意されたことがあったんですね。なにをーと反発もしましたが、結局はその方の方針を受け入れてやると、その方とも良い関係を築けるようになり、良い方向に向かっていきました。
◆好ましくないボランティアがきたときは?
だいたい最初の説明の部分ではじかれますね。
たいてい自分で気付いて去って行くことが多いです。
あとは、注意して見ておいた方がいい人のことは、ベテランボランティアで見守るなどしています。
最近はベテランボランティアの高齢化もあります。
長く続ける人がおじさん化していくのです(笑)。仕方ないですが(笑)。
◆ボランティアだからできること
お金をもらってないからこそできるなと思います。
お金がからむとうまくできないですし。
がっつりでなく、ゆるやかであるからこそ長く続けられるというのもあります。
ボランティアだからできること、ボランティアだからある視点をどんどん入れて、子どもたちと職員さんたちの役に立っていけたらいいなと思います。
【B児童養護施設ボランティア歴4年の方より】
私は遊びボランティアを中心に関わっています。
子ども達と長い関係になっていくうちに「職員になっちゃおうかな…」という思いも生まれてきます。
だけど私は、ボランティアだからこそ関われる距離感を追求していくことにしました。斜めの関わり方で。ボランティアして長くやっていこうと思いました。
ボランティアの立場がわかる職員さんって貴重だと思います。
【C児童養護施設ボランティア歴4年の方より】
Sさんの施設での実践を聞いて驚きました。ほとんどの施設はボランティアに対しての目線は厳しいというか、管理的ですね。そんなにボランティアが主体となってやっているのは本当にすごいですね。
私は海外でもボランティアをしていましたが、ビッグブラザーというシステムがあって、18歳以降の若者とペアになってサポートしていくというものがありました。今でもその子たちとは繋がり続けています。
日本の施設では子どもたちとの連絡先交換などはボランティアは難しいですね。
【D児童養護施設職員より】
Sさんの施設での実践には驚きました。私の勤務している施設では、やはりボランティア管理機能が強いと思わされました。子どもを守るため?それとも自分たちの立場を守るため?施設を守るため?誰のための管理なのか、今一度考え直してみたいです。
施設の職員はどうしても子どもたちへ平等に接することを重視しますが、特別感ももちろん必要なことです。ボランティアさんだからできる個別対応ももっと重視していきたいと思いました。
「自分の小さいころを知ってる人は貴重」という施設出身の若者の声を聞いたことがあります。親という後ろ盾がない彼らにとって、「あの時ああだったよね。小さかったのにね」なんて話せる相手がいることはとても大きなことです。
施設職員にできることは限られているし、施設職員はそれをちゃんと自覚しなければならないと思いました。自分たちで全部何とかしようと抱え込んではいけないなと。ボランティアさんをもっと頼って連携していくことは大切なことだと思いました。施設にいるうちにもっと素敵な大人と子どもたちに出会ってもらえるようにしていきたいです。
【児童養護施設で過ごした若者の声】
施設と関係ない大人との関係って貴重だと思います。
施設職員さんって、結構若いし、ぶっちゃけ人生経験浅いって思うことある。ダメっていうことではないけど、だからこそ外の大人との出会いの機会は本当に大事って思う。
ボランティアさんとかって、施設にいる身としては外部の唯一の大人。今後つながれたらいいのになーと思うけど、ルール上難しくて。本当に必要なのは、卒園後につながれる人。
結局、助けてくれるのは職員じゃない人だったりします。
「卒園してもいつでも帰っておいでね」と言われるし、そこうちらの実家なんだけどと思うんだけど、やっぱり気軽には行けないし、言っても断られる時ある。その瞬間「あ、実家じゃないわ」と思います。
「何かあったら連絡してね」は嘘だなぁって。
「あなたはしっかりしてるじゃん」って言われるけど、それは「いや、そっちが何にもしてくれないだけじゃん」って思っちゃう時があります。
大丈夫と思われているんですよね。もっと手のかかる子には手厚いけど。
で、いざ助けを求めた時は断られてしまうことが多いです。
とにかく、施設にいるうちから外部の人とつながれることは貴重なことです!!!
まとめ
児童養護施設のボランティアについて話しを深めてきました。
なかなかこのテーマで語り合える機会はないですよね。Sさん、今日は貴重なお話をありがとうございました。ボランティアが主体的に施設に関わるという新しいモデルについて聞くことができました。
施設にはそれぞれの方針があり、閉鎖的な所も多いです。子ども達を守らなきゃというリスク管理もあるでしょう。しかし、そこで考えていきたいのは「子どものために何が必要か」です。入所している間だけでなく卒園後も関係を続けるタイプのボランティア体制があってもいいのではないかと思いました。
「やばい!」という時に、誰かに電話できる。
危機的な時には誰の顔が浮かぶか。そういう人を一人でも多く、施設を卒園する子ども・若者につくってあげることが必要でしょう。
それがもしかして、施設時代のボランティアさんということも今後増えていくかもしれませんね!